若冲 Jakuchu
「オール讀物」に不定期連載をしていた時より刊行を心待ちにしていました。
まずは、装丁フェチとしましては、装丁をじっくりと。
カバー装画は「紫陽花双鶏図」。
若冲が42歳の頃から10年近くかけて完成させた「動植綵絵」30幅のうちのひとつで、
装画では双鶏を中心にしているので見ることはできませんが
実際には上部に瑠璃色や花浅葱色の紫陽花が豪華に描かれています。
装丁は野中深雪。
(この人の装丁本は過去にもけっこうジャケ買いしています。)
【追記】
こちらの「紫陽花双鶏図」は「動植綵絵」のものではなくジョー・プライスさん所蔵の作品です。
この「双鶏」が本作品の根底にあるモチーフなので、この部分を選んだのでしょうが、
数ある若冲の画からどれを?とかなり悩ましかったのではないでしょうか。
少し分かりづらいですが、表紙の地から天に向かって白練色から梅鼠色にグラデーションをつけています。(粋だ。)
スピンは黒。
灯りで光っていますが、見返しは濃い中紅色。
若冲の画には鮮やかな深い赤がよく使われていますがこの色はあまり見ません。
しかし何故か、表紙のベージュ系や見返しのこの色は若冲のイメージにとても合っている気がします。
さて、作品です。
若冲が何故これほどまでに画を描くことに固執した人生をおくったのか。
これは小説でフィクションです。
しかしよく知っている若冲の生い立ちの時代背景を忠実に起し擬えています。
作家を職業にされている人は羨ましいほどに妄想(失礼)たくましい。
この時代京都で活動していた実在の画人、池大雅・円山応挙・与謝蕪村・谷文晁・市川君圭らも登場。
若冲の作品は「生命の歓び」とよく紹介されますが、その鮮やかな彩色、細緻な表現を観るにつけ裏に潜む「寂りょう」を感じていました。
うまく言えませんが「哀しみを感じるほどの晴天」のような感じ。
京都出身の作者も幼い頃より若冲の画には彼自身の翳りを見出していて
その感覚のずれが本作品の出発点と語っています。
その点からも読んでいて共感ができ、最終章では嗚咽をもらすほどでした。
彩色の技法においても驚くような様々なことが詳らかになったり
若冲生誕300年もあいまって、今日日「若冲流行り」は否めませんが
作品を鑑賞するチャンスが多い今、この本を読むことで自分の中の若冲像が浮かび上がってきます。
7月上洛時の相国寺が楽しみです。
*関連過去記事
きょうのええもん。若冲はんは無類の素麺好きどしたが、
うちはやっぱり「ラーメンサラダ」。
札幌の居酒屋には必ずあります。ついつい頼んじゃう。
「冷やし中華」ではなく、あくまでも「ラーメンサラダ」。
今週のお題「最近おもしろかった本」